日日

だからこそ奥義会得後に剣心が薫に奥義のことを尋ねられて「あとは拙者の心次第」って答えるの、すごく誠実で好き。 #る
人って一見相反するような感情も同時に持ち得るし、シームレスな感情の遷移もあればまだらに入り混じったまま抱え続けることもできる。あまり「二面性」という言葉で括りたくない節がある。答が出せれば、闘いに決着がつけば、それで急に何もかも心変わりする訳でもないし世界が変わる訳でもない。儘ならなさを抱えたまま歩き続ける人にどうしようもなく惹かれる。 #る
その「生きようとする意志」を持つためには他者と関わることが不可欠で、贖罪のためずっと人と関わることを避けて全国を流浪してきた剣心にとって神谷道場に辿り着いてからの人との出会いがなければその強い意志を持つことはできなかった。あの時薫が呼びとめてくれて本当によかった。 #る
やっぱり剣心にとっての弱点が「悔恨と罪悪感のあまり自分の命を軽く見積もる自己犠牲の精神」で、それを克服するために必要なのが「生きようとする意志」だった、ってストーリー・キャラクター造形が好きすぎる。
そしてそれを経た上で悩み苦しみ抜いた末の答が「贖罪の人生を完遂すること」なの本当に本当に胸を打つ。 #る
第一幕で剣心が道場内で闘う時、いつの間にか履物を脱いで足袋だけになっているのなんか良い。神谷活心流や道場への敬意を感じる。全コマ確認したわけじゃないけど真古流の同志の時も斎藤の時も人誅編の時も道場内では履物を脱いでる(左之助や番神は履いたまま)。 #る
道場の一番奥の壁際で血を流す薫の屍人形を、剣心は道場の入り口付近から目視している。そのまま入り口付近で膝から崩れ落ちた剣心だけど、個人的にはそこから一切近づくことはないまま、触ることもないまま、左之助と恵が薫の屍人形に近づいたときに姿をくらましたと思っている。 #る
その当時、葬儀は「葬式組」という隣近所の人達で構成された組合が執り行っていたそうで、そこから葬具の調達、弔問客の接待、近所に知らせる"早使い"などを行う人員を手配していたようだ。人誅の時は、恵さんや妙さんもだけど、神谷道場のご近所さんたちが葬儀を執り仕切ってくれたのかもしれない。あと死亡届に医師の診断書が必要になったのは明治10年からだそうだから、恵さんは診断書も書いたのかもしれない。 #る #メモ
明治11年の夏は越路郎さんの初盆(亡くなってから初めて迎える盆のことを初盆・新盆という)。

明治5年に旧暦から新暦へ変更されてから東京ではお盆も7月になったそうだから神谷家的には7月盆なのかも。全国的に新暦を浸透させようとするも農業が盛んな地域では旧暦と季節が密接な関係のためいきなり改暦しろといわれても浸透しなかったらしく、その名残で現代でも8月盆の地域の方が多いけど、東京は7月盆とのこと。
7月盆でも8月盆でも越路郎さんの初盆であることには変わりないけど、京都から帰ってきたりその後すぐに縁の襲来があるので落ち着いてお盆を過ごすことはできなかっただろう。

葬儀や盆などの儀式・手順を通して、不在の関係性にゆっくりと想いを馳せ距離をはかっていく、あの時間。
それぞれがその時間をどういう風に過ごすだろうかと考えるのも好きです。 #る #メモ
社会と生活は当たり前に地続きで、その"生活"を剣心が地に足をつけて営みながら他者を助ける剣を振るい続けることこそが本当に大切だと思う。
だから所帯を持ちながら救民護衛の剣を振るい続ける北海道編もとても好きだ。
生活の中に幸福を見出すことで守りたかったものの実態を知るだけでなく、どんなに綺麗事だ偽善だと言われても甘っちょろい戯れ言を貫き通して僅かばかりでも世の中を良い方向へ押し上げようとする一人ひとりの選択こそがほんの少し社会を変えるのだ、という希望を感じる。 #る
人間と人間が互いに一緒に居たいと望んだ結果、共に暮らしを営むということ。自立した一個人としてその選択を己の意志で選び取ったこと。相手を慈しみ共に生活することで持ち得る"生の実感"に果てしなく惹かれる。 #る
告白(後編)で剣心がどんなものでも移ろいゆくよ、変わらないものなどないよ、と言っているのもめちゃくちゃ好きだし、それに対する薫の「私は剣心と一緒にずっと居たい」という言葉選びがとても好きだ。その上ただいまと口にしたのは流浪人になってからは京都から帰ってきたあの時が初めてだよ、って剣心の返答も好き(実は東京編で既に2回ほどただいまと口にしているけど、剣心本人の認識が神谷道場=今の己が帰る場所ってことなのが大事)。
「告白」と言うタイトルでこの会話を持ってくるところが本当に本当に最高すぎる。
時代も人も常に移ろいゆくものだけど、それでも、ただあなたと一緒にずっと居たい、という在り方がめちゃくちゃいい。一緒に居る理由は「一緒に居たい」というだけでいい。 #る
和月先生が剣心と薫を描くにあたって特に大切にしていることがなによりも「ゆっくりと深まっていく人の絆」だったからこそしなやかに枝葉が伸び育まれたと思うとさらにいとおしい。 #る
葉や実は季節と共に色づきやがて移り変わっていくけれど、剣心と薫にとっての「ゆっくりと深まっていく人の絆」は大樹の幹や根のようなものなんだろうと思う。 #る
私は「寂しさ」に自覚的な人が好きだけど、それはなんというか、人間が生きていく上で根源的に抱えるような寂しさであって、解消したいものでも忘れ去りたいものでもない。産まれ落ちた寂しさの膜みたいなものはうっすらと心に張っていて、それは他者の干渉でどうにかできるものではないけれど、溶け合うことのできない皮膚の感触があなたと私の輪郭を教えてくれる、みたいな二人が好き。だからこそ日々のささやかな可笑しみを分け合って哀しさと寂しさを個々に携えながら同じ夕日を眺めて目を細めてほしい、のだ。 #る
いつでも手を離すことはできたかもしれない。それでも、今こうして手を繋いで歩いていく道を二人は選んだというのが良い。たとえいずれ繋いだ手を離すときが来たとしても、これまで交わした言葉と時間が、記憶が、やさしい風となって頬を撫でてくれる。 #る