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2024年6月15日 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

瓦斯燈のともる風景

1stOPの感想(一部抜粋)
1stOPの感想(一部抜粋)


令和版アニメ「るろうに剣心」の1stOPの途中で瓦斯燈が登場します。
瓦斯燈と言うモチーフはキネマ版でも登場し印象的に使われており、私はキネマ版のあの一連のシーンも大好きです。
瓦斯燈を見るたびに、文明開化の象徴でもある瓦斯燈のその『光と影』をもっと見つめていたいと思いを馳せ、瓦斯燈のともる風景にとても胸がギュッとなるような感覚をいつも受けます。
ここでは深く触れませんが光があれば影があるのでそのあたりもいつか自分の考えをまとめられたな〜。

1stOPの途中で登場する瓦斯燈は検索する限り小平のガスミュージアムの瓦斯燈をモチーフに描いているのではないかと考え、過日、ガスミュージアムまで見に行ってきました。ガスミュージアムさんはこれまでのガスの歴史や暮らしの中のガスについても色々学べるめちゃくちゃ面白いミュージアムなのでぜひ行ける方は立ち寄ってみてください!
企画展も随時開催しているようで、私が訪れた時は「井上安治生誕160年記念 ガス燈ともる東京風景」がやっていて、大好きな井上安治の作品をたくさん見ることができてよかったです。

こちらのガスミュージアムさんに行ってみて初めて理解したのは

・アニメで描写されているものと似ている!と思ったガスミュージアムの瓦斯燈はイギリスのウェストミンスター寺院の瓦斯燈の復元であり、明治11年時点では日本に入ってきてはいないものだと言うこと。
・明治11年時点での瓦斯燈は裸火の瓦斯燈(蝙蝠翼型or魚尾型)になる。炎の色は赤黄色でちょっとした風でも揺らめく。上記のイギリスのウェストミンスター寺院の瓦斯燈はガスマントルと言う型で、オーストリアのウエルスバッハが明治19年に発明したもの。裸火の瓦斯燈と比べ明るさも5倍になり明治34年頃から国産化。明治40年頃には下向きマントルの登場で性能が増した。アニメで描かれているのはこの下向きマントルの形のもの。

明治40年以降に普及する下向きマントル。
明治40年以降に普及する下向きマントル。


裸火のガス燈。明治11年頃もこのタイプが普及していた。
裸火のガス燈。明治11年頃もこのタイプが普及していた。


思うのはアニメスタッフの方々はそこまでシビアには調査せずに色々な瓦斯燈の資料からこの形を華やかさなどの点から選んで(時代考証の細部はさておき)明治の文明開化を象徴するアイコンの一つとして描写したのかな、という想像です。
私個人的には時代考証を最優先するよりもゆるく楽しく作品の描写に合わせていく方が好みではあるのでその辺りはどちらでも良いなという感想です(例えばちゃぶ台は明治11年時点では普及していないはずだが原作ではちゃぶ台描写がある。私は”時代考証的に正しい”箱膳も良いけども、それよりもちゃぶ台を囲む剣心組が大好き)。
時代考証はさておき、実際に瓦斯燈を眺めることができて、瓦斯燈をOPに描写してくれてめちゃくちゃ嬉しい〜〜!という気持ちがさらに増しました。

話は明治初期の瓦斯燈に戻ります。
東京に初めて瓦斯燈がついたのは明治7年のことです(ちなみに明治4年に大阪造幣局の敷地の内外に瓦斯燈が設置されたり、明治五年には横浜に瓦斯燈が設置されたりしている)。
高島嘉右衛門とフランスの技術者プレグランの指導のもと、金杉橋から京橋にかけて85基設置されました。それが明治11年時点では356基まで増えます。
また、明治11年に新装開店となった劇場・新富座には舞台・客席に270灯の瓦斯燈が整備され東京で初めて夜間興行が許可されたそうです。この新装開店日は明治11年6月7日なのでちょうど剣心たちは京都にいる時ですね。
ちなみにこの新富座で明治12年にウエルノン一座を招いて上演した「漂流奇譚西洋劇」では河鍋暁斎と月岡芳年などが競作して行燈絵を描いています。

この新富座では看板の上に花ガスが灯されていたようです。花ガスとは炎色反応を利用したガスのネオンサインのようなもの。花や文字などを形づくり広告宣伝目的の看板などにも炎が使われていたとのこと。
私が行った日は実際に花ガスに火を灯す実演も行われていました!こちらは菊の形の花ガス。
※新富座では「新富座」という文字を形づくって火をともしていた模様。

実際に火を灯した状態の花ガス。
実際に火を灯した状態の花ガス。


第一回内国勧業博覧会の花ガス。
第一回内国勧業博覧会の花ガス。


明治時代に描かれた絵などを見ると瓦斯燈は時代の変化のシンボルの一つとして非常に存在感があったのだろうと思いを馳せてしまいます。幕末から明治初期にかけては世情も物騒だったこともあって夜間に出歩くことなんてとんでもない!という感じだったみたいですが、瓦斯燈の登場で夜の街がだいぶ明るくなったようです。生活の風景も瓦斯燈の登場によって大きく変化していきました。

※同人サイトから直接リンクを貼るのがなんとなく憚られるためhを抜いています。ご自身でコピペの上、hを足してアクセスしてください。
▶︎ガスミュージアム
ttps://www.gasmuseum.jp

#瓦斯燈 #生活採集


余談だけど下記はアニメの他のネタもと?かな??というメモ。

▶︎そのあと流れる映像、警視庁っぽい。こちらも明治後期〜大正前期の画像を参考にしているのでは。下記のリンク先参照。(このまちアーカイブスよく資料で拝見させてもらうけどめっちゃいい)
ttps://smtrc.jp/town-archives/city/hibiya/p04.html

▶︎次が明治初期の銀座のシンボルだった京屋時計店銀座支店をモチーフに描かれた井上安治画の多色木版摺っぽい??ここで鳩が飛んでるのもよすぎる〜!時の流れと平和の象徴!

▶︎川蒸気船・通運丸はこちらの錦絵を同じ構図でモチーフにしてることが分かる!両国橋なんだ〜!とってもいい〜
ttp://www.lmuse.or.jp/collection/gallery/nishikie/06.html

▶︎そして新橋ステンションは歌川広重<三代>画の錦絵を参考にしてそうと思ったんだけどどうだろう??
ttps://www.library.metro.tokyo.lg.jp/collection/features/digital_showcase/015/10/畳む

るろうに考現学